赤い風船

・AAで飲酒欲求の苦しさを思う様ぶつけたら、少し和らいだ。今日は飲まずに生き抜けそうだ。

・私の飲酒欲求は二種類あって、「ただ酒の味が恋しくて飲みたくなる」という酒好き性分としての欲求がまずひとつ。これは正直あまり苦しくない。ダイエッターがケーキを食いたくなるような感じかな。

・そして今回のような厳しい飲酒欲求は「酩酊して何もかもを忘れ去りたい、日常から離れたい」というアル中の症状としての欲求。破滅願望や希死念慮とも根っこが繋がっている危険な欲求。

・自分ではガマンをしているつもりはなく、気楽に酒から遠ざかった生活をして居たつもりでいたのに、心の中のどこかで、飲酒による酩酊を望む心をずっと我慢して抑えつづけてきたんだろう。そしてその我慢が風船みたいにどんどん膨らんできて、今きっとパンクする手前の状態なんだろう。

・雑草を、根っこから抜かずに地面の上に生えた部分だけいくら刈り取っても、同じ根っこからまた生えて来る。ただ我慢をするだけの飲酒では、いつかまたパンクする。そう理解していた筈なのに。

・私がアル中になるまで酩酊を求めなければならなかったその生きる姿勢、心の根っこの部分を探り当てて掘り返さないことには、いつまでも同じことの繰り返し。そしてアルコール依存症は進行性の病気だから、スリップするたびに脳や中枢神経、内蔵が侵されてどんどん悪くなっていく。坂道を転がり落ちるように。

・地元AAで仕事を任されているし、アルコール依存症者の問題にかんして、ようやく地元行政との現場レベルでのパイプも繋ぐことが出来そうになった今、私はスリップする訳にはいかないのだ。

・私がスリップすれば、地元AAのチェア仕事を誰かが負担しなければならなくなる。仕事とAAの役割の両立(しかも断酒しながら!)はしんどい。その負担が、今度は他の誰かをスリップに追い込んでしまうかもしれない。それに、今までチェアと6ヶ月の断酒を誇るかのように断酒について語っていた私が、どんな顔をしてAAに復帰すれば良いのか。

・今日だけ飲んで、明日からまた断酒すればいいや、などという甘えは誰も許してなんか呉れないし、犯罪にすらなりかねない。私がスリップしてしまったら、罪悪感と恥辱に堪えきれなくなって、自ら命を絶ってしまうかもしれない。AAの仲間の死は、悲しくて重たい。それがまた他の断酒を頑張っているメンバーに悪影響を及ぼしてしまう。

・理性ではそこまで判って居るのに、それでも酩酊を欲してしまう愚かな私。そういう病気なのだからしかたがないとはいえ、なんでこんなに苦しんだろう。