二律背反

・僕は寂しがりなのに、どうして群れるのを嫌うんだろう。

・単に人の輪に入って行けないだけなんだけどさ。

・昔は孤独を愛してひとりでバーに出掛けたりもしたけれど、結局カウンターの隣で飲んでる人と話したりして意気投合して一緒にハシゴしたり、バーテンさんと話し込んだりしてた。

・やっぱりひとりが寂しいんだろうなあ。それで酒を飲む。酔っ払うことで、自らが進んで道化の役さえ買ってみせる。人の和に入ってゆくために。私が25年生きてきて唯一見付けた処世術がこんなものだった。そしてそれは、私をさらに惨めな気持ちにさせる。そんな気持ちをいっときでも忘れたくて酒をあおり、道化芝居を演じる。その繰り返しだった。

・もう酒の助けを借りることは出来ないから、道化芝居も演じられない。だから、本当は人の輪の中に入って行きたいのに、そんな気持ちに蓋をして、孤独を愛するかのように振舞い続ける。痛み苦しみを他人事のように無視して、感情を捨て去る。そんなストイシズムに身を置いてなお生き続けられるような、そんな精神が、欲しい。