ごとうの夢は夜ひらく

 今日は朝から医者に行かねばならぬというのに、眠れぬままにこのような駄文を綴っている。眠れぬといっても不眠症のようにつらいものではなく、単に昨日の朝惰眠を貪りすぎただけの話だ。生活が夜型になってしまったことも一因ではある。

 思惟するなら夜更けがいい。昼間の陽光に照らされているときよりも、闇と静寂が私を世界から断絶する夜の方が、私の心との対話を行ない易いのだ。以前であればそこにアルコールを加えることで、理性や常識の枠を飛び越えた自由な発想を行うことも出来たけれど、今の私にはもうそれは適わない。

 私の夜の最良の友だった酒。ときに思考を柔軟にさせ、ときに突飛な発想を手助けし、ときに憂鬱を忘れさせ、ときに眠りの世界への橋渡しをして呉れた酒。酒のない人生など考えられなかった。その酒が、もう、無いのだ。私の人生からすっぽりと酒が抜け落ちた。そして世界が色彩りを失って行く。私の世界はセピア色になってしまった。それでいて現実の輪郭はよりはっきりと、ときに鋭い伴って、私にのしかかってくる。

 酒の味を、快い酔い心地を知らなければよかったと、いっそ、酒になど出会わなければよかったとさえ思うこともある。