助言者

・昨日、とあるAAミーティング会場で、ある方に「スポンサーになっていただけませんか」とお願いをした。「スポンサー」というのはAAの中のひとつの制度で、自分よりも断酒(ソーバー)歴が長い、いわゆる「先行く仲間」に、専属のアドバイザリスタッフになってもらって、日常の相談をしたり、「ステップ」(どのようなものかはまた後日触れるであろう)を踏む手助けをしてもらったりするものだ。

・私はAAに繋がってからかれこれ9ヶ月近く、スポンサー無しでやってきた。

・それは、通う会場が限られていて、なかなか良い具合の人を見つけられなかったことと、スポンサーを頼んで拒絶されることを恐れるところから来ていたのだ。そしてなにより、自分ひとりで十分にやっていけるのではないか、という驕りと慢心があった。

・では、そんな頑なな私に何が転機になったのか。それは数週間前、ふと気付いたのだ。「独力で成し遂げる『断酒』と、AAに通いながら酒をやめてゆくことは、何か根本において違う行為のような気がする」と。

・AAでは、ただ「酒をやめる」のではなく、人間的な「成長」をすることが主要テーマというか、ライトモチーフとしてそういうことが意識されていることに気付いたのだ。事実、「霊的(スピリチュアル)な成長を目指す」という言葉がAAの発行物でも使われているし、私はAAに繋がった当初から、そのような言葉を幾度となく目にしてきた。

・ただ、これまでの私には、その言葉も耳から耳へ抜けてゆくだけだった。でも、今は違う。何となく、少しではあるが、解かってきた。

・だから、私はよりAAのプログラムに沿ったかたちで酒のない人生を生きようと思うに到り、思い切ってスポンサーをお願いしたのだ。

・ちなみにこの「スポンサー」、ローレンス・ブロックの『八百万の死にざま』では「助言者」と翻訳されていた。適切な訳だと思う。