瘴気

 私は砂浜を歩いていた。何処までも果てしのない砂浜を。その先には希望に満ちた未来があると信じて疑わず。けれど時が経つにつれ、潮が満ちて来、砂浜はどんどん狭くなって行く。

 そして気付いた時には、私の周り全てが底無しに深い海に囲まれていた。海水が、私の足許を少しずつ、しかし確実に削り取って行く。辺りは見渡す限り広がる漆黒の深淵。戻り道も、逃げ場も、ない。

 どうすることも出来ないままに、やがて最後の足場を削り取った海水が、私の足に粘っこくまとわりついて、暗黒の海底に引き摺りこんで行く。