風にふかれていたら

 駅で電車を待つ間、あるいは電車に乗って揺られている間にふと思う。行くあても定めずに電車に乗り、遠いところへ行ってしまいたい、と。どこか見知らぬ田舎町に下車して、宿をとり、浴びるように人生最後の酒を飲む。いい加減酔っ払ったら、部屋の鴨居に浴衣の帯をかけて首をくくるのだ。こういった妄想がにわかに現実性のあるものとして、私の心に揺さぶりをかけてくる。
 これから先ずっと、酒を楽しむ事の出来ない人生の残り滓みたいなものを生き続ける重みと、此のような思い付きとを秤にかけてみる。