長いお別れ

 中島らもさんは酒を「性悪女(しょうわるおんな)」などと喩えたものだが、してみるとこの性悪女は私の浮気を許してくれないらしい。私がS女史に電話で告白をはじめるとこの性悪女は僕の意識をなくさせ、見事に振られるように仕向けたのだ。意識が戻るとウィスキーの瓶は中身が半分になっていて、電話には覚えのない会話の記録。
 今度は私がこの性悪女を振ってやる。アルコール症専門医をネットで探し出した。アルコール依存症に1度なった人間は、酒を永遠に断つか、飲んで死ぬかの2つの選択肢しか選べなくなる。楽しみを1つ失ったみじめな人生か、悶え苦しみ醜態を晒すみじめな死に様か。
 そして今、私の心の支えになるようなものは何もないのだ。果たして生きていけるのだろうか。