ほんとは死にたくなんかないんだ
・健康になりたい、などと言ったら傲慢だろうか。器用に生きたい、要領良く生きたいなどと言ったら贅沢だろうか。飢餓も戦乱もない平和で豊かなこの国に生まれただけですでに幸運なのだから、それ以上望むのは贅沢なのだろうか。つらい、苦しい、だから生きるのがしんどい、と言うのは単なる自己憐憫の感情なのだろうか。
・楽しいことだけ数珠のように繋いで生きていけたらと幾度思ったことだろう。もちろん悲しみ苦しみばかりが数珠繋ぎになっている訳でもないけれど。
・生まれてきた以上、いつかは必ず、死ぬ。それは誰でもそうだし、それらは等しく悲劇だ。悲しいけれど、皆、死んでいく。それならばいっそ、生まれてこなければ良かったのに、と思う。私なんかが生まれてこなければ、私が苦しむこともなかったし、私が死んで誰かが悲しむこともなくなる。私なんか、はじめから存在しなければ良かったのに。
・すべてが始まらなければ、すべてが無であればどれほど良かっただろう。ビッグ・バンがなければビッグ・クランチも決して起こらないのに。
・私のような「死にたがり」がのうのうと惰眠を貪り、ちゃんと生きたくて、勉強もしたくて働きたいと思っているような人間が、アンゴラやカンボディアでは何万人も地雷を踏んで死んだり障害を負って働けなくなったりする。ソマリアやシエラレオネでは内戦に年端もいかない子供達が兵士として酷使されて傷つき死んでいき、何人もの女性が強姦され望まない妊娠をさせられたりするばかりか、前線で弾除けがわりに使われたりしている。
・いまでこそ「死にたがり」の私が、そんなところへ行けば間違いなく恐怖に怯え命を惜しみ、這い伏して助命を乞うに違いないのだ。
・情けない。くだらない小人物だ。