遠く空は晴れても

 研究室に置いてある酒を処分した。処分する前に耳掻き一杯ほど舐めてみたが、もはや美味には思えなかった。点滴治療による洗脳が効果を発揮しているのだろうか?それとも点滴の中に密かに抗酒剤が混入されていたのだろうか?


 ――死ぬのは怖くないか、と聞かれれば、死ぬのは、怖い。死ぬのは、嫌だ。私は死ぬのならば、納得して死にたいのだ。こんな惨めな境遇で犬コロみたいに死んでしまうことは、嫌だ。だが、それが何であろうか。これ以上結論を先に延ばしたところで、状況はより悪化するだけだ。ならば機会を逃さず覚悟を決めて、身を断ずることが忠孝なのではないだろうか。

 もうしばらく考えてみようと思う。