魔に憑かれて

■ここ数日ほぼずっと連続飲酒の状態にあった。深夜深酒をし、昼過ぎに起き出して二日酔いを迎え酒で誤魔化して、夜が来ればまた飲んでいた。幾度も気憶をなくした。泥酔して道路に寝転び、星空を眺めたりもした。
 最近は食欲も減少し、余り食べられなくなってきた。食べても、しばらくは怒った胃袋の抗議と戦わねばならず、そんな日々が段々と苦しくなって行く。

■このまま行けば、確実に死ぬだろう。それは判り過ぎるほどよく判って居る。むしろ私は死を望んですら居る。遺書も、親しい人間にメールで一括送信出来るようにしてある。

■しかしそのような話をS女史にしたとき、彼女は最初こそ心配そうな口ぶりだったものの、遺書の話に至って彼女は怒った。電話の向こうから私を叱った。「そんなことしたらごとうさんを絶対許さない。」

■そんな彼女の真剣な言葉に心を揺さぶられたからだろうか、それとも単に酔いがそう言わせたのか。ともあれ私は彼女に告白した。「ぼくはSさんのことがずっと好きだった。」

■今の私にはそんなことを言う資格などないだろう。だがしかし、もうそろそろ全ての事柄に、ひとつひとつ、ケリをつけるべき時なのではないだろうか。少なくともS女史からの電話を取ったとき、私はそう強く思ったのだ。

■ひとやものごととの繋がりをひとつひとつ断ってゆき、最後は何処か死に場所を決め、浴びるように酒を飲んで、永い永い眠りに就く。